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2025.01.17

運転特性データを活用した脳の健康状態を推定するアルゴリズムの有効性を確認

株式会社NTTデータ
国際自動車株式会社

 株式会社株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)と国際自動車株式会社(以下:kmタクシー)は、2024年1月から実施するkmタクシーのドライバーの運転特性から現状の脳の健康状態を推定するアルゴリズムの実証実験注1(以下、本実証)において、その有効性を確認しました。本アルゴリズムにより、運転特性から脳の健康度が低下している人を推定可能となります。結果をドライバーに通知することで、認知機能低下の自覚症状がない人でも、脳の健康度のセルフチェックツールなどを用いて自発的に自身の脳の健康状態を把握したり、早期に病院を受診したりするなど、認知機能低下の抑制に向けた行動変容につなげることができるようになります。


 今後、NTTデータは、本アルゴリズムによる通知が行動変容につながるかなどの運用オペレーションの検証を行い、本サービスの商用化を目指します。これらの取り組みを通じて、ドライバーの運転の安全性向上や健康の維持・向上をはかり、安心して利用できるタクシー社会、自動車社会の実現を目指します。

【背景】

 認知症の患者数は年々増加傾向で、特に65歳~75歳において発症者が増え始めるといわれています。認知症による社会的な影響の一例として、認知機能の低下による運転事故が挙げられます。実際、死亡事故件数のうち、高齢者が第一当事者となる割合は増加傾向で、それらの事故の中には認知機能低下が疑われる高齢者が多いというデータ注2も存在します。
 認知症発症以前の軽度認知障害の段階では症状に気づかず、認知症になって初めて病院を受診する人が多い傾向にあることから、認知機能低下の早期の検出ならびに抑制に向けた対処が求められています。
こうした背景から、NTTデータとkmタクシーは、自動車の運転という日常生活の中で収集可能なドライバーの運転特性から、現状の脳の健康状態を推定、およびその結果をドライバーへ通知し、病院の受診や認知機能低下抑制に向けた対処を促すことで、多くの人の健康寿命および運転寿命を延ばし、安全な運転につなげることを目指して本実証を行いました。

【実証概要】

 本実証では、無作為に選定した65歳以上のkmタクシーのドライバー数十名を対象に、エーザイ株式会社(以下、エーザイ)が提供する脳の健康度のセルフチェックツール「のうKNOW®」注3を利用し、脳の健康度の把握を行いました。その後、kmタクシーの車両に設置したGPS機器から、速度や加減速など、対象ドライバーの走行データを取得し、これらの走行データ、株式会社ゼンリン(以下:ゼンリン)が提供する地図データと、脳の健康度データを突き合わせて、ドライバーの脳の健康状態を推定するアルゴリズム注4を開発しました。

各社の役割は以下となります。
• NTTデータ:運転特性データの分析、脳の健康状態を推定するアルゴリズム構築
• kmタクシー:実証フィールドの提供
• エーザイ:脳の健康度のセルフチェックツール「のうKNOW」の提供
• ゼンリン:地図データ(道路データ)の提供
• NPO法人高齢者安全運転支援研究会:検証に向けたデータ収集支援、および分析検証への助言

【実証結果】

(1) 脳の健康度のセルフチェックツールの結果と走行データの相関関係の確認
脳の健康度チェックツール「のうKNOW」で計測した脳の健康度スコアと収集した走行データを比較し、実証期間中の運転傾向を分析しました。その結果、脳の健康状態と運転挙動には、例えば健康状態が良い人は、悪い人に比べると、運転におけるヒヤリハットの頻度が低いなどの相関関係を認められることが確認できました。

(2) 危険運転検知アルゴリズムの開発と有効性の確認
運転シーンにおいて重要度が高く、特徴を定量化しやすい運転挙動を抽出し、運転挙動と脳健康度との相関関係が期待される危険運転検知アルゴリズムを開発しました。例えば、急減速を行ったシーンにおいて急減速を行う必要があったのかを判定し、脳健康度との比較を行いました。その結果、アルゴリズムと脳健康度との相関関係が認められ、有効性を確認できました。

(3) ドライバーの特徴を定量化して脳の健康状態を推定
運転挙動と脳健康度との関係性に着目した論文をベースに、ドライバーの特徴を定量化して推定するアルゴリズムを開発しました。本アルゴリズムは認知症の方の行動特性を考慮し、タクシードライバー特有の運転特性を補正して推定しています。この結果、脳の健康状態が低下していると推定される人の検出漏れが少なく、高い精度で推定できることを確認できました。また、タクシードライバーに限らず、ドライバーの運転特性を定量化していることで一般ドライバーに対しても検出可能であり、その他の職業ドライバー特有の運転特性を補正することでさまざまなドライバーに対しても検出可能となります。

【今後について】

 認知機能低下の自覚症状のないドライバーに対して、自発的に認知機能の測定を促すことは容易ではありません。一方、本アルゴリズムにより、走行データを活用し、日常生活における行動から脳の健康状態を推定することが可能となります。今後、NTTデータは、本アルゴリズムによる脳の健康状態の推定結果をドライバーに通知することで、自発的に「のうKNOW」などのセルフチェックツールを利用した自身の脳の健康度把握や、必要に応じて医療機関で受診するような行動変容につながるかなどの運用オペレーションの検証を行い、本サービスの商用化を目指します。また、職業としてのドライバーを抱える業界・企業へのサービス展開や、ヘルスケア等の多様なデータソースとの連携を行うことで、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

注1 運転特性データを活用した脳の健康状態を推定するアルゴリズム構築の実証開始
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/012400/
注2 平成29年中における高齢運転者による死亡事故に係る分析について(警視庁Webサイト)
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/koureiunten/menkyoseido-bunkakai/2/kakushu-shiryou/0003.pdf
注3 エーザイが提供する、トランプをモチーフとした4つの簡便なテストを通じて、脳の反応速度、注意力、視覚学習および記憶力を、PCやタブレット、スマートフォンを使ってチェックすることができるツールです。(非医療機器)
https://nouknow.jp/
注4 脳の健康状態の推定が可能と想定されるシーンは多岐にわたりますが、本実証は走行データから推定できるアルゴリズムの開発を目指した取り組みとなります。
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